ECとは何か。今更きけないネットショップ・イーコマース市場のトレンドを解説。
はじめに
2020年のコロナ影響で実店舗による収益は大幅に縮小しています。さらに悲しいことに、この状況を脱却しようと、ECを急拵えで出店してしまったがために、大きな赤字を作ってしまった業者の方も多く存在します。しかし、EC(イーコマース)について、きちんと歴史や成功要因を知ることで、成功する可能性は何十倍にも向上することもまた事実です。この記事ではECについての説明を通じて、皆様がインターネットを活用し、大きな売上を得られることを目的としています。少し長い文章になるかもしれませんが、是非ECの世界を知って、今後の計画にお役立ててください。
ECの歴史
1990年代 家庭用PCの普及とECの誕生
Windows95とインターネットが登場し、インターネットというオンライン空間が一般の人々にも使われる空間へと変わっていきました。それに合わせて、モール型のECサービスの展開が開始されています。例えば、1997年には「楽天市場」が、1999年にはYahooオークションと同時に「Yahooショッピング」がサービスを開始しています。2000年にAmazonがサービスを開始し、いわゆる国内の3大ECサイトと呼ばれるサービスは2000年までには出揃っていました。
※モール型のECサービスとは、楽天やAmazonのような、ECサービスの中に、店舗を儲けて販売するサービスのことです。
出店方法などについての記事で詳しく説明していますので、ご興味のある方は以下もチェックしてみてください。
2000年代 規制強化を経て、高機能ASPが登場
ブロードバンドや携帯電話の普及に伴い、一般の人がより日常的にインターネットでものを調べることが当たり前になってきた時代、EC市場も大きな拡大を迎え、いわゆる「第一成長期(2001年~2005年)」、「第二成長期(2007年~2009年)」と呼ばれる時代を迎えます。第一成長期と呼ばれる期間においては、ECのセキュリティの脆弱性が問題となり、多くの消費者問題を引き起こしました。その対策として、オンラインでの商取引や、個人情報に関する法規制が厳しくなりました。
その後の第二成長期と呼ばれる期間には、高機能なASPサービスと、モール型のECのサービスの充実が進みました。ASPサービスでは、それまでの簡単なカート機能を備えられるASPとは異なり、第二期で登場したfutureshopやMakeShopのような、現在でも多くの企業が利用する高機能なASPサービスの展開が始まりました。また、モール型ECのサービスという側面では、2008年にはAmazonがFBAを、2009年には楽天・Amazonが即日配達を開始するなど、出品者側とサービスの利用者側、の双方向に資するような形でモール型ECのサービス内容が充実していきました。
※ASPサービスとは、ECの出店に必要な機能を一つのパッケージにしてWEB上で提供しているサービスのことです。
※FBAとは、Amazonが提供する、在庫管理から発送までを代行するサービスです。
以下の記事に詳細を解説してありますので、ご興味のある方はご覧ください。
2010年代 メルカリ(CtoC)やBASE(インスタントショップ)の登場
スマホの登場によりこれまではパソコンが苦手だった人でもネットにアクセスできるようになり、EC事業の参入障壁が低くなっていきます。2012年にはBASEが誕生し、無料で自社のECサイトを制作できるようになりました。また、2013年にはYahooショッピングの出店料金が無料になるなど、さまざまな出店形態で、手軽にECを始めることができるようになりました。また同年の2013年には、メルカリがサービスを開始しています。これまでは業者が消費者に販売をするという形をとっていましたが、メルカリの登場によって、一般の消費者がオンライン上で物を売り買いすることが可能になりました。
2020年代 これから何が起こるのか
誰もが当たり前のようにネットを活用し、もはや「ネットサーフィンが趣味」とも言えない時代になりました。その中でECは今後どのような進化を遂げていくのか。いくつも方向性はありますが、EC上における体験価値の向上と、オフラインも含めた顧客体験の最適化である、オムニチャネル化が進むのは間違いないでしょう。
EC上における体験価値の向上という面では、VR技術が普及することによって、よりリアルに近い購買体験がECでも可能になりそうです。オムニチャネルという面では、ECで誰もが物を販売できるようになったからこそ、SNSなどを使ってコミュニケーションをとりつつ、店舗で商品を体験してもらって、オンラインで注文してもらうというような、これまで分断されていた接点を、一連の体験として捉え、全体を最適化・充実化させることの重要性が増しています。今後はこの全体設計が一つの大きな差別化のポイントとなっていくでしょう。
ECの主なビジネスモデル
小売店
小売店がEC事業を営むというのは、最もイメージしやすいビジネスモデルといえるでしょう。やっていることは単純で、実店舗を保有する事業者がその販売面をインターネットに移し、物品を販売します。物を仕入れて、販売するという基本的ビジネスモデルは、実店舗販売と変わらないので、スムーズにECに事業を展開できます。ECを展開することで、実店舗とは比較にならないほど、商圏を拡大できる点が小売店事業者がEC販売を展開する大きな動機です。
卸業
こちらも一般的と言えるのではないでしょうか。一般消費者に対してではなく、会員制のモール型サイトなどを通じて、事業者むけに商品を販売します。卸業はお客様である、各事業者との繋がりが非常に重要なビジネスですが、ASUKULや、モノタロウのように、多くの事業者に開かれたビジネスを展開することで、関係値の薄い事業者に対して商品を販売できるようになったりします。また閉じた販売方法でも、顧客との関係維持にかかるコストを削減できるなどの効果を見込むことができるでしょう。
※ASKUL、モノタロウとは、業者向けの商品販売を行っている大手ECサイトで、どちらも東証一部上場している超大手企業です。
製造業
日本ではあまり聞かない形態ですが、近年D2C(Direct to Commerce)と言われ、製造者が直接消費者に繋がるビジネスとして大きく注目されています。製造者が直接消費者につながることのメリットとしては、商社や卸業者に取られているマージンの部分を収益にできることや、顧客の生の情報を得られることなどがあげられます。
WEB専業
自分ではものを作ったり、売ったりしていなくても、インターネット上での集客が強い人がECを始めるケースもあります。Instagramのインフルエンサー(フォロワー1万人など)がアパレルブランドを立ち上げるケースなどが有名で、実店舗ならばかかってくるであろう賃貸料をはじめとするコストを負うことなくビジネスを始めることができます。また、FBAなどのサービスを使うことで、在庫管理や発送などの業務を伴わずに物販を行うことが可能となっています。
中小企業での活用事例
いわゆるソフトドリンクのお店【楽天】
https://www.rakuten.co.jp/nakae/
こちらのお店は、和歌山に実店舗を構える町の商店。当初は小売事業を営んでいましたが、出店した時分は食品の卸を柱としていました。そんなお店が楽天に出店するきっかけとなったのは、スーパーマーケットやコンビニの台頭に伴う危機感でした。出店費用である月額5万円も高額に感じていましたが、将来性に賭けて出店を決意。自動販売機で買える商品だからこそ、どう売り出すかの企画をECコンサルタントと共に考えながら店舗運営を行ったそうです。結果的にこれまでの商売では感じることのできなかった、企画の楽しさを感じながら店舗運営に成功されています。
地方の商店が、少ない商品数で売上を獲得【Amazon】
https://services.amazon.co.jp/vos/detail007.html
Amazonでショップを持つ販売主さんは当初、沖縄のお土産を全般的に取り扱うネットショップを自社で開業しました。しかし売れ行きは思うようにいかず悩んでいたそうです。そこで、出店説明会に参加して知ったAmazonに出店をすることに決意しました。出店の際には、以前のネットショップで管理の煩雑さに追われていたこともあり、「島ぞうり」という商品に絞って出店をしました。
Amazonへの出店を行った結果、週に一度も売れることがない、ということすらあった自社サイトの状態から、一週間で商品が売れるようになりました。さらに、一年単位で見ても売り上げが前年の4倍になったそうです。
CUSE BERRY 【楽天】
https://www.rakuten.ne.jp/gold/cuseberry-dakkohimo/
ニッチな商品を扱う事業者でも、EC事業で商圏が拡大することで、店舗だけでは十分なお客様を確保できないような大きな収益をあげることが可能です。この「CUSE BERRY」さんもその代表的な例です。赤ちゃん用品の中でも、抱っこ紐に特化して販売を楽天で行っているお店です。リアル店舗だと、近隣から十分なお客様を連れてくることに苦戦する可能性もありますが、オンラインでは日本中の小さなお子さんを抱える家族に対して商売ができます。このように、商圏を大きく広げることができるので、ニッチな強い商品だけでも、十分に戦うことができます。
youange【BASE】
こちらは「BASE」を利用して作られたサイトで、”ゆうこす”がプロデュースするスキンケアブランドのショップです。インスタントECではありますが、他の出店形式と遜色ないクオリティになっています。このように、インスタントECを最大限利用することで、個人の事業者であっても、立派な事業者と見紛うほどのEC事業を展開することができます。
成功するEC作りに必要なステップ
出店先選び
第一に決めなくてはいけないのは「どこに出すか」です。大きく分けると① 楽天などのモールへの出店、② 自社ECサイトの2つがあります。それぞれメリットとデメリットがあり、一概にどちらが良いと断言することはできません。しかし、モールや自社ECには、コストや集客、在庫管理や発送に至るまで非常に多くの部分で違いがあります。ご自身がどういった目的でECを行い、将来的にはどの程度の売り上げや規模にまで成長させたいと考えているのか、そういった根本の部分をよくよく考えて、最適な出店先を検討しましょう。この出店先の知識については、専門的な部分やオープンになっていない情報も重要になってきますので、本気でECを拡大したいと考えている方は、プロに相談することもおすすめです。
販売商品の決定
今まで実店舗で売っていた商品をただ売るだけでは間違いなく失敗します。オンライン販売においては競合と比較される場合がほとんどなので、価格や見た目で負けない商品を企画する必要があります。配送料が売上の20%というケースも珍しくなく、コスト計算も非常に重要です。ご自身で販売できる商品はなんなのか、ということを起点に、競合となるような店舗はどのように販売を行っているのかを研究して、商品の売り方(パッケージ)を検討しましょう。また、実際にその商品を販売したらいくら経費がかかって、手元にはどのくらいの利益が出るのか原価計算をしっかり行いましょう。この作業を怠ってしまうと、儲けに比してコストだけが肥大化してしまうといった事態も発生し得ます。
出店作業とデータ整理
いざ売る商品を決めても、システム設定が必要になってきます。大きく分けると、① 契約、② システム設定、③ 店舗・商品データ入稿、④ 店舗作成 といった作業があります。この出店作業にはかなり工数を割かれます。また、商品登録など、そこまで重要ではないと思われがちな部分についても、実は売上に大きく影響を与えるといった、実は重要なポイントも存在します。すでに事業を行われていて、そこまで手が回らないという方や、正しいやり方を怠ってしまったがために機会損失になってしまうことを避けたい、とお考えの方は、出店代行のサービスなどを利用するのも一つの手かもしれません。
集客とサイト改善
ここまでのステップを終えることで漸くお客様に商品を販売できるようになりましたが、インターネットではこちらから呼び掛けないとお客様はやってきません。実店舗と異なり、フラッと店舗の前を通るということはあり得ません。SNSやweb広告、メルマガなどを利用して、購買見込みの高いお客様を効率的に集めましょう。また、ECはサイトを作っておしまいではなく、実店舗のリニューアルのように、購買に最もつながるサイトへと日々アップデートを行う必要があります。商品の配置や、バナーなどの最適化はもちろんですが、利用しているシステム的なアップデートにも対応していく必要があります。この辺りも、プロに相談したり、一部を外注するなどすると効率的かつ最新の店舗運営が可能になると思います。