利益や売上とは。今更聞けない財務の基礎知識をEC運用者向けに解説します。

はじめに

ECの運営を検討している。ECをもう既に運営している。そういった方々に質問なのですが、財務的な知識は十分だと言えますか。損益計算書を読んで、自社の状態がどうなっているのか、どこにボトルネックがあるのか把握できるでしょうか。今回は必要なのはわかっているけれど、勉強を遠ざけてしまっているという方に向けて、最低限抑えておきたい財務知識について解説いたします。最後には、財務分析の結果ネクストアクションをどう立てれば良いのかについても解説していますので、ぜひEC運営の参考にしてみてください。

売上、利益とは?

そもそも売上と利益の定義について、正確に理解できているでしょうか。売上とは、「商品、サービスを販売して得られる代金の総額」のことをいい、利益とは、「売上から商品を販売するために必要となったコストを差し引いた金額」のことをいいます。この後、損益計算書の部分で、売上総利益や、営業利益、など、いくつかの〇〇利益という単語が出現しますが、基本は「利益 = 売上 – コスト」という式で表せるということを理解しておいてください。

売上、利益を把握する理由は?

次に、なぜ売上や利益を把握しなければならないのかについて確認をしていきます。

ビジネスの現状把握のため

売上や利益は現在の経営状況を最も端的に、客観的に示す指標です。そのため、売上や利益を把握することは、現在自分が行っているビジネスの状態を知る上で必要不可欠な作業になってきます。また、売上や利益を把握するとはつまり、どのように売上が上がっていて、どうコストがかかっているのかが分かるようになるということですから、現状の経営状況について把握するだけに止まらず、今後どういった方向性でビジネスを行っていけば良いのかもわかるようになります。ですので、売上や利益を把握することはビジネスを行う上で最も基本的かつ本質的な行為だと言えるでしょう。

税務対応を適切に行うため

これも常識的な内容ですが、税金対応を適切に行うためには売上・利益を把握しておく必要があります。税金は、税法によって規定される課税所得(益金から損金を引いた額)に税率をかけて納めるものです。その課税所得を適切に計算するためには、売上や利益について把握することは必要不可欠です。ここの部分ができていなければ、適切な納税や確定申告などができず、不作為であっても脱税になってしまう場合もありえます

銀行借り入れを受けやすくするため

これは売上と利益を把握すればできる問題かと言われればそうではありませんが、少なくとも売上と利益を把握していなければ銀行からの融資を受けることは通常よりも難しくなるでしょう。銀行からの融資を受けることは、事業を拡大する上で非常に現実的で、効果的な経営判断です。しかし、売上や利益が適切に把握できず、正確な財務資料を作成できなかったり、事業赤字に陥ってしまっていると銀行からの融資を受けにくくなってしまい、成長機会を失うことに繋がります。

EC事業者の損益計算書構造と代表的な項目

ここからは、一般的なEC事業者を想定して、損益計算書の構造と、各項目にどのようなものが入るのかを確認していきたいと思います。項目について、どこまで理解する必要があるのか、について疑問に思う方もいるかもしれませんが、借り入れを行っていないEC事業者は営業利益まで抑えれば大方十分です。借入を行なっている場合は利息支払後の利益である経常利益まで抑える必要があります
ではまず、全体としてどのような構造となっているのかを確認します。

損益計算書は、各項目の内訳は各企業様々ですが、以下のような項目の金額の差し引きで構成されます。

  • 売上・・・①
  • 売上原価・・・②
  • 売上総利益(①-②)・・・③
  • 販売費および一般管理費・・・④
  • 営業利益(③-④)・・・⑤
  • 営業外収益・・・⑥
  • 営業外費用・・・⑦
  • 経常利益(⑤+⑥-⑦)・・・⑧

この他にも、純利益を計算するために、特別費用・特別収益などが登場しますが、ビジネスを適切に把握するという面では優先度が劣後するので、今回は省略します。

上で示した各項目がEC運営においてはどんな内訳で構成されるのかについても確認していきましょう。

売上・・・①

商品販売代金

商品の販売代金が損益計算書でいう売上の額に相当します。実際の合計販売代金だけでなく、「客数×単価×購入個数」の掛け算の形で売上を把握すると、現状をより正確に把握することができるでしょう。

売上原価・・・②

仕入原価

売上原価で最も大きな比重を占めるのがこの仕入原価です。この仕入原価は、商品・素材を仕入れるのにどのくらいの費用をかけたのかによって計算されますので、商品の仕入れに要した配送料などもこの仕入原価として計算するようにしましょう。

支払手数料(決済手数料)

支払手数料は主に、クレジットカード決済などで取引が行われた際に発生する費用です。この説明だけでどの数字かイメージできるかとは思いますが、念の為補助的な説明を加えますと、売上の100万円分をクレジットカード決済であげている場合、クレジットカードの利用料金が売上の4%ほどかかるので、4万円分がこの支払手数料に該当する費用となります。

荷造運賃

荷造運賃は、荷物を梱包するための梱包費用と、配送に要する配送料で構成されます。配送料を購入者に負担させている場合でも、梱包費用はかかりますので、荷造運賃が0円になるということは考えにくいかと思います。

売上総利益(①-②)・・・③

売上総利益は上記の売上から売上原価を引いた形で求められます。一般的に粗利と呼ばれる数字は、この売上総利益を指した数字です。

販売費および一般管理費・・・④

外注費

様々なところで外注を行った費用はここで勘定します。例えば、ECサイトの開発・更新にかかった外注費用や、Amazonの配送サービスであるFBAの費用などもここに該当します。

人件費

これは運営に携わった自社社員への賃金が該当します。

広告宣伝費

商品を販売するために行った広告費用などはここで勘定します。webでの広告費用などが主なものとなってくるかと思います。

システム費用

利用しているシステムの月額費用などが、このシステム費用として計上されます。ECサイトの開発・更新の際に、ECサイトのインフラ(基本システムやサーバー等)を提供する会社に支払った額は、このシステム費用として計算されます。

倉庫費用

在庫商品などを管理・保管しておくための倉庫費用はここで勘定します。

営業利益(③-④)・・・⑤

営業利益は、売上総利益から、販売費および一般管理費を差し引いた額によって計算されます。この数字は、実際のビジネスの状況がどうなっているのか客観的に示す指標となりますので、この営業利益と、それがどのような構造で成り立っているのかを常に把握できるように心がけましょう。

営業外収益・・・⑥

営業外収益は、投資などによって得られる収益などが該当します。ECを運営事業においてはあまり関係のない部分かと思います。

営業外費用・・・⑦

支払利息

銀行で融資を受けていて、そのために支払った利子がこの営業外費用として計上されます。

経常利益(⑤+⑥-⑦)・・・⑧

経常利益は、ビジネスを行っていく上で、継続的にかかる収益・費用などを考慮して、現在の立ち位置がどうなのかを示してくれる指標となっています。

売上、利益の目標の決め方

財務の構造は理解できたけれども、では実際にどうやって売上・利益の目標を立てたら良いのか分からないと思われる方もいるかと思いますので、その目標設定の仕方についても解説します。以下の流れで売上目標を設定すると無理のない売上目標が立てられるかと思いますので、確認してみてください。

コスト見積もり

事業にかかるコスト項目を全て洗い出し、各項目の費用を見積もりましょう。上記で説明しました、損益計算書でいう、「〇〇費」や「〇〇費用」となっている項目をそれぞれ計算すると良いと思います。そのような数字はすぐに分からないと思うかもしれませんが、インターネットやプロに相談するなど、他社の運営状況について情報を集めようと努力すれば、大まかな数字はイメージがつくようになると思います 。

投下可能資金額の決定

次に、コストとして投下できる手元資金額を決定しましょう。いくらまでなら、コストとして投下できるのか、最大限の費用を見積もるより、最小限の数字を見積もるのがよろしいかと思います。突発的に費用がかかったり、見積もりよりも費用が多くなることなども想定して、投下できると断言できる金額を決定しましょう

利益率を設定

投下可能資金を決定したら、商品1つあたりの利益額を決定して、利益率を設定してみましょう。競合他社がどのくらいの利益率でビジネスを行っているかも踏まえつつ、ご自身が1販売につきどのくらいの利益を得たいのかを明確にして、利益額を決定してください

売上目標の設定

投下可能資金額と、利益率が分かれば損益分岐点の計算が可能になります。つまり、投下可能資金額をまかなうには、いくらの利益が必要なのかを求めて、その利益額を利益率で割ってあげることで、損益分岐点となる売上額が判明します。いくらの利益を生み出したいというのが明確なのであれば、投下可能資金額に、目標売上額を足して同様の計算を行えば、目標となる売上額を設定することが可能でしょう。

損益シミュレーション

最後にスプレッドシート等を用いて事業が本当に黒字になるかシミュレーションを実施しましょう。ここまでは希望に基づいて数値を計算してきましたが、その希望が実現性のあるものなのか、販売計画などに照らして実現性をチェックしましょう。そしてシミュレーションを行なった結果、黒字にならない場合、売上を伸ばす施策を考えるか、コストを削減する施策を考える必要があると言えます。このあたりについては、アイデア的な側面も重要ですが、運営ノウハウが最も重要な部分だと思いますので、身の回りでEC運営をしている方や、プロに相談するのが良いと思います

赤字の場合どうするべきか

ECをすでに運営されていて、赤字になってしまっている場合、どうしたら良いのか分からない方もいるかと思います。まずは、これまで説明した損益計算書の項目などを参考にして、収益・コスト構造を把握しましょう。その上でどうしたら良いのかを解説します。

売上が伸びていない場合

コストは削減できそうな余地がないことがわかった時には、売上が十分でないということです。なので、売上の項目を因数分解してどこに問題があるのかを分析し、対応策を検討しましょう。具体的には、冒頭で少しお伝えしたように、「客数×単価×購入個数」の形で売上を分解してみて、どこに改善の余地があるのか、競合他社はどうなっているのかを分析してみてください。

コストが過大な場合

目標としていた売上は十分に取れているのに、赤字になってしまっているという場合はコストが過剰である場合がほとんどです。コスト構造がどうなっているのかをしっかりと明らかにした上で、その原因を特定・解消する必要があります。ご自身ではコストが適切な値になっているような気がしていても、ECに精通している人からすると明らかに改善できる部分などが見つかることもあります。それは一重にツールやオペレーション面での知識・ノウハウをどれだけ持っているかの差によるものですので、どのコストが過剰なのか分からない、削減方法が分からないという方はぜひプロに相談することをお勧めします

CTA画像
デジタルマーケティングやIT業務導入など、様々な案件に対応をさせていただいております。弊社のコンサルタントが無料で相談に乗るので是非お問い合わせください。
詳しく見る

EC・D2CのWEBマーケティングコンサルなら-株式会社a general studio > ブログ > ニュース > 【2024/04/19】EC担当者・マーケター必読!最新マーケティングニュースまとめ&媒体情報|2選

ページトップへ