無料でネットショップが簡単に作れるインスタントECとは何か。使うべきビジネスと成長戦略まで解説します。
インスタントECとは
インスタントECとは、無料または低価格でネットショップを開業できるEC構築・カートシステムのことです。
そもそもネットショップ、つまりECを始める際には、買い物周りのシステムをパッケージ化した、いわゆる「カートシステム」を導入してサイト構築を行うことが多いです。そしてその「カートシステム」には、費用が多くかかるものから、手の込んだカスタマイズが可能なものまで幅広く展開されています。そして、その「カートシステム」の中でも、サイト構築が低コストかつ簡単にできるシステムが、この「インスタントEC」として分類されます。
人気ショップ事例
まず、低コストで構築したサイトのクオリティにイメージが沸かない方もいると思いますので、ここではインスタントECの中でも存在感のある「BASE」と「STORES.JP」を使って作られた人気ショップをいくつか取り上げてみたいと思います。
大山崎 coffee roasters
まずは「BASE」を利用したサイトから。こちらは京都のコーヒーショップのECです。トップに表示されるお洒落な画像がサイト全体の雰囲気をつくっています。またコーヒーのラベルを商品画像として使うなど、シンプルなサイトデザインに合わせた商品の見せ方・陳列を行っているところも魅力的です。
youange
こちらも「BASE」を利用して作られたサイトで、”ゆうこす”がプロデュースするスキンケアブランドのショップです。白を基調としたサイトデザインとなっていて、トップページの表示にかなりこだわりを感じます。またコンセプトページといった、サブのページまでしっかり作り込んであります。後に解説を加える予定ですが、無料・有料の使えるアプリで機能やデザインを大きく拡張しています。
KIIT
ここからは「STORES.JP」を利用して作られたサイトを紹介します。まずはこちらのKIITのネットショップです。メンズのアパレルを扱うショップで、シンプルな構造になっています。価格の表示が変わったものになっているのがわかっていただけると思います。テンプレートと呼ばれる、サイトの型をお気に入りのものにすることで、自分好みのサイトを作ることができます。
たかはしよしこのエジプト塩ストア
これも「STORES.JP」で作られたサイトです。エジプト塩の専門店で、カラフルなデザインが特徴です。上に紹介したKIITとテンプレート自体はそこまで変わらないと思いますが、イラストや配色などを変えるだけで全く違うサイトに見えるのではないでしょうか。このように、機能に頼らずとも自分の努力次第で差別化は十分にできます。
インスタントECの特徴
低コスト
インスタントECの最たる特徴は、コストの低さです。後に詳しく解説しますが、インスタントECでは登録料や月額利用料が無料というものが多いです。自社でカートシステムを導入したり、パッケージでECを構築する場合、100万円単位で費用がかかることも珍しくありませんが、インスタントECを利用すれば初期費用をグッと低く抑えることが可能です。
出店が簡単
出店の手軽さもインスタントECならではの魅力です。インスタントECの場合は、予め作りたいサイトの型である「テンプレート」を自分で選択して、そこにパーツを当て込む形でサイトを構築していきます。そのため、サイトデザインやエンジニアなどを雇うことなく簡単に出店が可能です。また、登録自体もスムーズにできることもポイントです。
カスタマイズの幅が狭い
出店が簡単であることの裏返しに、インスタントECではカスタマイズできる部分がかなり限られています。というのは、出店する際に「テンプレート」を選択して構築するので、そのテンプレートの枠から大きく変更が必要なサイトデザインを実現するのは難しいです。また、機能面でも制約があることが多いです。有料で提供される拡張機能を使って機能やデザインをグレードアップさせることが可能ですが、商品の表示順に種類を持たせたり、タイムセールを行うといった細々した部分で実現できないことがあります。
集客を自力で行う必要がある
これは楽天やAmazonなどの「モール」への出店との大きな対比になるのですが、インスタントECを使用した場合、自社サイトへお客様を集客する必要があります。「モール」の場合は膨大なユーザーを抱えているため、そのユーザーを集客し商品を販売することが可能です。しかし、インスタントECはあくまでも自社サイトなので、広告やSNSの運用などを通じてお客様をサイトに連れてくるための多大な努力が必要となります。
かかる費用
無料で始められるとはいいながらも、完全無料というわけではないので、主要サービスである「BASE」と「STORES.JP」の料金体系を紹介したいと思います。
BASEの場合
月額費用・登録料
BASEは月額費用・登録料共に無料です。
サービス利用料
BASEでは商品を売上げた場合、3%分のサービス利用料が請求されます。また決済手数料として売上の3.6%+40円/個、費用がかかります。
振込手数料
売上の振込申請時にも費用がかかります。振込依頼が2万円以下の時には、振込手数料250円と、事務手数料の500円がかかります。振込依頼金額が2万円を超えると、事務手数料が無料となり、振込手数料の250円だけがかかります。
stores.jpの場合
stores.jpはプランが、「フリープラン」と「スタンダードプラン」の二つのプランが設定されています。機能差もあるのですが、ここでは料金だけを解説していきます。
月額費用・登録料
「フリープラン」の場合、月額費用と登録料は両方無料です。一方で「スタンダードプラン」は登録料は無料ですが、月額費用が1980円かかります。
サービス利用料
stores.jpではサービス利用料という名目では費用がかかりません。しかし、決済手数料は請求され、「フリープラン」では売上の5%、「スタンダードプラン」では売上の3.6%かかります。
振込手数料
こちらはプランの違いではなく、振込申請金額に応じてか金額が変わります。振込申請金額が1万円以下の場合は振込手数料として275円と、事務手数料の275円がかかります。1万円を超えて振込申請をした場合には事務手数料が無料となり、振込手数料の275円のみが請求されます。
シミュレーション
では実際に店舗を運営した場合どのくらいの収益が上がるのかをシミュレーションしてみたいと思います。
BASE:月商30万円、平均購入単価5000円のケース
収益:37,550円の黒字
合計費用:22,450円
内訳)
サービス利用料:9,000円
決済手数料:13,200円
振込手数料:250円
前提)
売上に占める各項目の費用割合は以下のと仮定する。
梱包・物流費:20%
原価率:20%
人件費:30%
広告宣伝費:10%
=営業利益:60,000円/月
BASE:月商300万円、平均単価3000円のケース
収益:361,750円の黒字
合計費用:238,250円
内訳)
サービス利用料:90,000円
決済手数料:148,000円
振込手数料:250円
前提)
売上に占める各項目の費用割合は以下のと仮定する。
梱包・物流費:20%
原価率:20%
人件費:30%
広告宣伝費:10%
=営業利益:600,000円/月
実際にここまで収益をあげるのは難しいかもしれませんが、売上が上がるほどかかる費用も多くなっていくということを体感してもらえれば大丈夫です。また、ここでは有料の拡張機能を使っていない設定になっていますが、実際には使う場合が多くなると思いますのでもう少し利益額は低くなることが予想されます。
出店計画の立て方
コストを洗い出す
手数料だけでなく、ECを運営するための人件費や仕入れコストも全て洗い出しましょう。その上で、どのくらい収益が見込まれるのかをしっかり計算してください。もしも、原価計算や作業時間の計測が難しいという場合には、専門のコンサルタントを雇うのもおすすめです。無料サイト構築にそんな必要あるのかと思われるかもしれませんが、Amazonや楽天などの他の出店形態ならどのくらい収益があげられるのか、といったところまでアドバイスをもらえるので収益の最大化のためには有益なはずです。
拡大・撤退ラインを明確にする
実際のところどのくらい儲かるのかは出店してみない分からないのが実情です。まずは出店してみるのが良いですが、売上目標や利益額などを期間を定めて設定してから、出店を行いましょう。費用の設計上赤字にはなりにくいインスタントECですが、収益は上がったとしても、わずかなお金しか残らないのであれば、他の部分に投資をする方が有益です。そのため、ミニマムでいくら収益を得たいのかを先に明らかにしておくことをおすすめします。
また、シミュレーションでもお伝えしたように、売上が伸びるほど費用も増大していくのが「インスタントEC」です。なので、うまく軌道に乗った場合、違うカートシステムを利用したり、「モール」への出店も予め検討し、拡大路線も選択肢に入れておくのが良いでしょう。
集客方法を検討する
冒頭にも説明しましたが、自社ECとなるインスタントECでは集客が非常に重要です。せっかくECを構築しても、そこに人が集まらなければただの空き箱になってしまいます。なので、どのような手法で、どのくらいの費用をかけて、何人集客をするのか計画を立てる必要があります。この計画は、目標収益から逆算して作り上げていくようにしましょう。
プロに相談する
インスタントECは無料で手軽に始められるからこそ、多くの人が手を出しやすいです。しかしそれ故無計画な運営で、投資したコストを無駄にしてしまったり、他の手法ならもっとポテンシャルのある事業を生かしきれないケースが多くあります。本当にインスタントECで良いのか、物販を最大化するにはどうするのが最適なのかという視点で、プロからのアドバイスをもらうことは非常に有益です。本気で利益をあげたいとお考えであれば、是非一度相談を受けることをおすすめします。