受注・販売管理システムとは。EC運営に必要なバックヤードサービスを解説
はじめに
受注・販売管理システムは、ECだけでなく、実店舗を運営する人にとってもはや必須のシステムといえます。自社EC、実店舗、楽天市場、Amazonなど、様々な販売チャネルで販売された商品を一元管理し、会計ソフトや倉庫管理に正しい情報を連携するのは大きなコストがかかる作業だからです。まだ他店舗展開していない方には想像がつかないかもしれませんが、他店舗展開するまでには必ず導入することをおすすめします。
受注・販売管理システムを入れるメリット
商品登録作業が簡単になる
ECを運営したことのある方ならご存知でしょうが、商品情報を登録するのは地味に面倒な作業です。特に、複数の販売面を持っている場合、価格の変化や商品名の反映に大きな工数を取られます。特に面倒なのが、各販売チャネルでオリジナルな商品名をつけている場合で、SKUあたり5分以上かかる作業になり、1,000SKUも持つECでは非常に大変な作業である事はいうまでもありません。こういった負荷を軽減してくれるのが管理システムで、一度の反映で全ての販売チャネルに情報を反映することが可能になります。
商品の在庫管理が簡単になる
商品の在庫管理はミスをすると大変な不快感をお客様に与えるので、重要な業務と言えますが、複数の販売チャネルを持っているとなかなかミスゼロが難しいのが実態です。しかし、在庫管理システムがあれば、一度に全ての販売面に対して情報を共有できるので、在庫切れ商品を販売してしまうようなミスを防止できます。
後々のデータ分析ができる
それぞれの販売チャネルを別々に管理していると、結局どこで商品が売れたのか、広告の効果やキャンペーンの成果がわからなくなってしまいます。こういったデータ統合もシステムでは可能になり、今後の仕入れ情報やマーケティング施策の方針決定の非常に重要な材料になります。もちろん、個別チャネルからデータを持ってきて分析する事も可能ですが、単純に手間がかかりますし、自動化した方が便利である事はいうまでもないでしょう。
イレギュラーな会計処理も簡単対応
意外と大きいのがイレギュラー対応です。キャンセルや返金などが発生した場合、複数の販売チャネルのどこで払い戻しをするべきなのか、きちんと処理するのは工数がかかります。イレギュラーな処理が年に一回というECサイトは珍しく、普通は100人のお客様がいれば1人くらいはイレギュラーな対応を必要とします。定常業務ではないと無視をせずに、必要コストだと思って自動化するのが良いでしょう。
システム比較
ネクストエンジン
ネクストエンジンはクラウド型の受注管理システムです。ネクストエンジンの一番の強みは、導入企業数で、業界最多の業界最多の3万店がネクストエンジンを導入しています。
またネクストエンジンは、運営会社のhameeもecショップを運営しているため、ec事業者目線のサービス設計がなされているのも魅力です。
料金は一つのメニューしかなく、初期費用が無料で月額費用が10,000円〜の受注件数に応じた従量課金制となっています。月に400件までは従量課金がかからずに、10,000円で利用できるのでかなり低コストから始められるサービスだと言えます。
CROSS MALL
CROSS MALLは商品登録・在庫管理・発注・仕入れなどのネットショップを運営するのに必要な業務を一元管理できるASPソフトです。CROSS MALLでは専属のチームによるサポート体制が充実していることに加えて、運営会社のアイルが他に展開するサービスの”aladdin shop”などと連携し、リアル店舗との連携ができることも強みです。
料金は初期費用は無料で、月額5,000円~からの、モール数や商品数などに応じた従量課金制となっています。
my logi
こちらは物流システムのサービスです。受注や在庫の自動引当、出荷登録など、主に受注管理業務を中心として物流全体の業務を自動化できるAPIとなっています。
このシステムの特徴は、代表的なカートシステムやショッピングモール、一元管理システムなどの他のシステムとの連携が可能な点です。
料金は3つのプランに分かれていて、
mylogi entry 初期費用:100,000円、月額費用:30,000円
mylogi standard 初期費用:500,000円、月額費用50,000円
mylogi pro 初期費用800,000円 初期費用75,000円
となっています。
自社の規模に合わせて、料金を選べるというのもmylogiの魅力の一つです。
GoQ system
GoQ systemも通販業務のクラウド型一元管理サービスです。商品検索ができる機能や、顧客ランクを付けれる機能など、便利な機能が豊富についています。また、楽天のRMS*との連携にも強みを持っていて、RMSとインターフェース自体も似ているので、直感的に使いやすいといった特徴もあります。
料金は、初期費用30,000円~、月額費用15,000円~からで機能ごとのプラン設計になっています。そのため、登録商品数や件数に応じて料金が変化しないので、特定の機能だけを大規模に自動化したいといったニーズを持っている方には、コスト面でかなり良い選択肢になりそうです。
*「RMS」とは、楽天の店舗運営システムのことを指し、店舗構築や在庫管理、メール配信に、データ分析などが一つにまとまった、楽天での店舗運営には欠かせない機能です。
よくある失敗
商品データの一覧がそもそも存在しない。販売面毎に別々のSKU管理が発生している
属人的に様々な販売面に出店を続けた場合、実は同じ商品なのにデータ上は別々になっているというケースがあります。この時、データを統合していく作業はそれなりに大変で過去に遡ってデータ修正していく必要があります。SKU数が多いとさらに大変なので、挫折する方は多いかもしれません。
事業が成長したい未来の状態と選定システムが合致しない
今だけを見てシステムを導入した場合、1年後にはもう不満が出ているといった事象が発生します。これは、事業のあるべき業務フローとシステム要件をすり合わせなかった結果と言えますが、システム導入のプロでもない限り大体の人はミスをする領域です。もしも、事業を成長させて長期的に続けていきたいのであれば、システムコンサルタントを入れて長期プランの設計を行うべきでしょう。
会計ソフトや倉庫管理が属人的
受注管理システムは、サービスによりますが全てを対応するわけではなく、他のシステムと連携することを前提とした場合が多いです。例えば、会計ソフト(freeeなど)と連携してデータを共有することなどがありえます。この時、会計ソフト側が非常に特殊な設定になっているとうまく繋ぎ込みができないというケースが発生し、導入コストが爆発的に増えてしまいます。
自社業務のフローを変更しない
多くの場合業務系システムは、一般的な会社の業務フローにとって使いやすい画面設計になっています。受注管理や販売管理システムでも同様で、一般的な業務を想定して設計されています。しかし、そこで自社特有の業務がある場合に、それを変更せずにシステム側をカスタマイズする方が一定数いらっしゃいます。こういったケースでうまくいった試しはありません。軽いカスタマイズでも、10年、20年と保守していく必要があります。本当に大事な業務でないのなら、自社の業務フローを変更してシステムに合わせた方が良いと思います。
導入までの流れ
業務フローを分析し、システム化範囲を決定
そもそも自社の業務がどうなっているのか正しく言語化しましょう。誰がどんな頻度で作業するのか、誰が読んでも理解できる粒度にまで落とすのが必要です。その上で、すでにシステム化されている範囲と、今回システム化したい受発注業務の範囲を明確にします。
導入するシステムを比較検討して、Fit&Gap分析する
システム化したい業務範囲に合わせて、候補となる受発注・販売管理システムをリストアップします。これにより、比較検討が可能になり、自社の業務をどれだけ変更せずに導入できるかが一目瞭然になります。また、業務変更とは別に新規に叶えたい機能やコスト面の不安がある場合にも合わせて比較すると、後々の検討で手戻りが少なくなります。
導入するシステムを決定
比較検討に基づいて導入するシステムを決定し、サプライヤーと交渉を開始しましょう。多くの場合、それほど長い期間を要するわけではありませんが、カスタマイズが必要な場合には見積もりをとることが重要です。カスタマイズに時間を要する場合、段階的にシステムをリリースするように計画を練りましょう。
エンジニアと相談して導入、各担当部署のマニュアルを整備
実際にシステムを導入していくことになった段階で、エンジニアに繋ぎ込みやカスタマイズを依頼するのと並行して、作業マニュアルを作成しましょう。各部署の担当者が新しい業務に慣れるようにマニュアルを作る作業は絶対に必要です。なんとなくやっていると、新しいシステムでバグが頻発するので注意しましょう。
これらの作業は、正直なところ一般的なEC運営事業者だけでは困難だと思います。それぞれのシステムベンダーの担当者またはITコンサルティング企業に相談をすると良いでしょう。確かに高い費用はかかりますが、長期的に必ず回収できるコストなので、業務効率化を目指してEC運営体制を強化しましょう。