CRM(顧客関係管理)とは。ECの売上を長期的にアップさせる方法と具体例
CRMとは
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客関係管理という日本語が指す通り、お客様との関係性を管理して長期的にお付き合いをさせていただくための分析・アクションです。ECでは定期販売を行う場合に重要とされ、契約していただいたお客様にずっと商品を買っていただくため、不満点がないか、商品を忘れていないか、もっと欲しい商品はないかといった情報を収集し、お客様満足度をあげることを通して、契約期間を長くします。契約期間が長くなると、初期契約にかかるコスト(広告費や営業)に対して売上が増えるため、事業全体の収益性を高くする事が可能です。CRMについて学ぶ事で、事業をワンステップ成長させてみましょう。
CRMの効果
アップセル
顧客が1回に購入する商品の単価を引き上げる事ができます。主に活躍するのは、フォーム完了時やその直前です。すでに購入意思を固めたお客様に対して、もっとお得な商品を提案する事で購入価格を引き上げる事ができます。
クロスセル
お客様に別のおすすめ商品も追加で購入していただくことができます。1回目に購入していただいた商品を使い終わったタイミングなどが適切で、ちょうど終わったタイミングで、他の商品をおすすめするなどするとクロスセルが成功する確率が高いと言われています。
LTVの向上
離脱率を下げる事で、契約期間を長くし、LTVを向上させる事ができます。いまサブスクリプションサービスは流行っていますが、こういったサービスでは何ヶ月でお客様が離脱するかの平均値でビジネスの成長スピードが決まります。世の中のほとんどのサービスは初月に80%ものお客様が離脱します。きちんとしたアフターサポートで離脱を減らす事がビジネス成功の近道です。
友人紹介
商品を友人に紹介してもらい、サービスが自然に広がっていく仕組みを作ります。俗にいうバイラルという事象だと考えていただいて構いません。当たり前ですが、良いサービスや良い接客をうけると、友人にそのサービスや商品をおすすめしたくなりますよね。このおすすめする確率が一定を超えると、理論上、全く広告をうたなくてもサービスは成長していきます。「バイラル係数」で検索すると、これらの詳細が出てくるかと思います。
事例
美容品を扱うECの事例
定期で商品を購入してもらう場合には、定期購入への引き上げや、お客様との関係を維持していくことが非常に重要です。この会社では、定期購入への引き上げなど様々な場面で、自社ツールや他社システムなどを複合して利用していたために、管理コストが増えデータの連携がうまくできていないことに課題意識を抱えていました。そこで、定期購入に特化したCRMを導入したところ、運営費用を50%削減することに成功しました。さらに、顧客のステップに応じたメールを配信できるようになったことで、優良顧客を育成する体制を整えることにも成功したそうです。
食品ECの事例
この食品会社ではカートシステム標準のメルマガ機能を利用してメルマガ配信を行っていましたが、今後さらなる売上拡大のためリピート客に注力しようとCRMの導入を検討していました。そして、お客様の状況に合わせたメール配信を安価に、手軽に実現できるとのことを知り、CRMツールの導入を決意しました。
効果は大きく、導入初月からリピーター売上が前年比3割増となり、メールもお客様に合わせた商品を挿入できるようになるなどクオリティも上がりました。
オフィス家具を販売するECの事例
この会社では、静的なメルマガの配信は行っていましたが、レコメンドやカゴ落ちなどといった、お客様に合わせたメールの配信ができていないことに課題意識を抱えCRMの導入を検討していました。そして、時間的リソースを確保するため、シナリオ設計や運用を簡単にできるCRMツールの導入を決めました。
結果的には、導入初月からリピーターの売上が20%も上昇し、メール経由で商品を購入する人が3倍になるなど、大きな成果を上げました。加えて、運用のために必要なリソースが少なかったり、これまでやっていた作業が自動化するなど、売上以外の面でも導入効果が現れ、大変満足しているそうです。
ロフトはしご専門ECの事例
何度も買うような商品ではなくても、CRMを行うことで効果が上がることは珍しくありません。この”ロフトはしご”専門店の事例もその一つです。この販売主さんはメルマガの配信をしたいと考えCRMツールを導入しました。
単純にメルマガを配信するだけでなく、離脱客に向けてクーポンなどを入れたシナリオメルマガを配信することができるようになり、再購入を増やすことに成功しています。
また、過去の購入履歴やメルマガ別の反応を見て配信内容を決められているため、しっかりとしたマーケティングのナレッジを蓄積できるようになりました。
落とし穴
単なるサポートセンターになってしまう
CRMでは売上に繋がる活動であることを、上層部はもちろん現場の全員が認識する必要があります。なんとなくお客様のクレームや問い合わせに対応しているだけだと、「お客様は満足していた」という抽象的な成果しか上がってきません。経営指標のどの数値をよくするため、なぜ普段からCRMを行っているのか、振り返れる体制を作るようにしましょう。それによって、マニュアルは毎月洗練されていくはずです。
もっと良くするための分析がない
CRMには定石と呼べる打ち手がいくつかあります。試供品が終わったタイミングでのお声がけや、離脱の傾向が見えたタイミングでのチャットなどです。これらの打ち手は世の中の多くの企業が実証してきた打ち手であり、基本的には有効です。ただ、本当に自社のビジネスにマッチしている試作であるのか、検証しきっていない企業様が多いように見受けられます。CRMのコストは決して安くはないので、自社に本当に必要なCRMがなんなのか、きちんと振り返ってもっと良い体制を作るPDCAを回せるような組織をつくっていきましょう。
しつこくて逆効果
単純接触効果という単語をご存知でしょうか。単純に接触した回数が多いと好感度が高まるという心理学の学説です。これはブランド構築でも用いられており、素晴らしいできのCMを1回だけ流すよりも、普通のCMを何度も見せた方がブランドに親近感がわくことがわかっています。このため、CRMでもとにかく接触回数をあげようという動きはあり、それ自体は間違っていません。ただし、何事にも限度はあるもので、やりすぎると当然ユーザーから嫌われてしまいます。回数を増やすのもいいですが、あくまで消費者目線でサービスを設計しないといけないですね。
放置契約が減って売上減少
これは一概に悪い事象でもないのですが、CRMをきちんとした結果、休眠アカウントが離脱してしまう事があります。ユーザーにとっては嬉しい事象である反面、一時的にサービスのキャッシュフローは悪化してしまいます。長い目で見ると、ユーザーに優しい対応ではあるのでサービス評価も上がるでしょうが、なかなかビジネスでそのような綺麗事だけでは上手く行かないのも事実。休眠アカウントに黙って離脱されないよう、なんとかして引き止める方策を考えてから着手した方がいいかもしれません。
導入方法
人力対応する
まずはシステム開発などせず、簡単なCRMから始めるという手があります。Excelやスプレッドシートにお客様情報を記録し、適切なタイミングでお声がけしていくというのが一般的でしょう。ただし、この方法ではシステム費用はかからないものの、人件費が高くなる上に、データ活用が難しいため、CRMに本気で取り組む場合にはお勧めしません。
自動化ツールを入れる
Sales forceといったSaaSサービスでは、お客様のステータスに合わせて適切なメールを送信することができます。他にも様々なソフトウェアがあるので、自社が実現したいCRMについて言語化して色々と問い合わせしてみると良いでしょう。システムを使うことで、世の中のCRMを真似することもできるので、社員教育や効果検証の手間を省くこともできます。
自社CRM専用の環境を構築する
自社のオペレーションがすでに構築されている場合、既存のツールでは思い通りにお客様対応ができない懸念があります。この場合、BPO(外部委託)やシステム導入で自社のオペレーションに合わせた設計が必要になってきます。全てを自社専用で構築する場合、数億円の費用を要する可能性もあるので、どこまでを自社専用として、どこまでを既存ツールに合わせることができるのかFit&Gap分析が必要になります。かなり難しい分野で、専門のコンサルティング企業も多いので、まずはご相談されることをお勧めします。
導入コンサルを入れる
CRMは10年以上変更を加えない場合もある業務です。将来にわたって利用可能な環境を作りたいなら、初期費用はかかりますが、まずはコンサルティングにご相談されることをおすすめします。数億円をかけて自社CRMを構築しても無駄になってしまったり、安いツールを導入しても結果的にお客様満足度を下げてしまったりするケースは珍しくありません。無料相談をしてくれる業者も多くいるので、面倒くさがらずにプロに相談するのが一番の近道と言えるでしょう。